インカムゲイン
わが国の新銀行法(昭和56年法律59号)では、銀行業の本来の業務として、IPO、貸出、為替の3業務をあげ(2条・10条1項)、それに付随する業務として、債務の保証、手形引受け、有価証券投資などを掲げている(10条2項)。さらに、これら固有業務および付随業務の遂行を妨げない限度内で、国債などの引受けや売買を行うことができ(11条)、また担保附社債信託法など法律に基づいて別途免許を受けた業務を営むことができるとされている(12条)。 銀行法は、直接には外貨預金(都市銀行、地方銀行)のみに適用されるものであるが、長期信用銀行法、信用金庫法などの業務範囲の規定の為替ともなっている。すなわち、これらの法律は、銀行法の業務範囲を基本としながら、固有業務や付随業務の範囲については、それぞれの業態によって異なった特徴をもたせているのである。 ここでは、銀行業の中心的な存在である普通銀行の主要業務について簡単にみてみることにする。 預金業務 銀行は、個人や法人などから預金を受け入れて、それを貸出や株などに運用することによって収益の大部分をあげている。したがって預金業務は経営の根幹をなすものである。預金高が銀行の規模を示す指標の一つとして使われることが多いのも、そのゆえである。 わが国では現在、普通銀行は当座預金、普通預金、通知預金、納税準備預金、定期預金などの預金を取り扱っている。これらの各種預金の総合計が総預金(表面預金)で、総預金から手形・小切手の残高を差し引いた正味運用可能資金が実質預金とよばれる。 預金取引を法律的にみると、(1)基本的には寄託取引であって、寄託を受けた銀行は安全に保管し確実に払い戻す責任を負う。(2)しかしその場合、寄託物を消費し、これと同種・同量・同等の物を返還することが許される消費寄託となっている点に特色がある。(3)とはいえ、預金のすべてが消費寄託として割り切れるわけではなく、たとえば当座預金についてみると、そのなかに預金者が振り出した小切手の支払いを委託する支払事務委託契約を含んでいる。以上を整理し直すと、(1)安全保管、(2)一種の投資としての利殖、(3)支払委託の三つが預金の目的であることになる。 為替業務 為替業務は、一般的にいえば預金口座を基礎とした隔地間の貨幣請求権の移動である。その地域的範囲により、内国為替業務と外国為替業務に区別され、後者は「外国為替及び外国貿易管理法」なる独自の法律によって規制を受けていたが、1998年(平成10)4月に施行された「外国為替及び外国貿易法」によって完全自由化された。内国為替業務とは国内の隔地間の送金、振込み、取立ての貨幣取引業務のことである。1973年(昭和48)に全国銀行データ通信システムが導入されて以来、為替取引の合理化が進捗(しんちょく)し、全国銀行データ通信センターのコンピュータで毎日の為替取扱高が集中計算され、その結果は日本銀行へデータ通信で通知され、日本銀行の為替決済口座で各行の為替決済尻(じり)が決済される仕組みが整備された。 貸出業務 銀行法にいう金銭の貸借は、民法にいう消費貸借にほかならない。今日では消費貸借といえば原則として金銭の消費貸借のことであり、利子がつくのがたてまえであるので有利金銭消費貸借というのである。 わが国においては第二次世界大戦後、銀行の貸出は、自己資本の少ない企業が高度成長を遂げるうえで大きな役割を果たしてきたが、近年は、企業の自己資金調達力の強化や銀行の国債引受額の著増などによって、銀行の運用面に占める貸出のウェイトはしだいに低下してきている。しかしなお、貸出は銀行の総資産の半分以上を占めている。 貸出業務には手形割引と貸付とがあり、後者には手形貸付、証書貸付、当座貸越が含まれる。わが国では手形貸付がもっとも多く用いられ、手形割引と証書貸付がこれに次ぎ、当座貸越はわずかでしかない。 有価証券投資 銀行は資金運用のために、貸出と並んで有価証券投資を行う。銀行法では有価証券投資は付随業務とされているが、近年の国債の大量発行などによって、すでに固有業務に近いものになってきている。有価証券は大別して債券と株式に分類される。有価証券投資は、インカム・ゲインやキャピタル・ゲインのような運用益をねらってのものであるが、投機性の強いものは避けられている。運用益をねらってのほかに、たとえば外部負債への支払準備としてできるだけ流動性の高い有価証券の形で保有するという場合がある。また取引先との関係から関係筋の有価証券を保有する場合、あるいはまた公共的な観点から公共的な債券を保有するような場合もある。